未入会の先生方へ

日本臨床内科医会は内科診療に従事する約13,000人の実地医家の会です。毎年秋の連休に医学会を開催し、実践的な講演も行っています。最近行った医学会で人気のあった7つの講演の要旨を掲載します。明日の診療にお役立て頂ければ幸いです。

1)見逃してはいけない血算

聖路加国際病院血液内科・人間ドック科部長 岡田定
第30回日本臨床内科医学会
日本臨床内科医会会誌第31巻第4号2016平成28年12月

血算は数ある臨床検査のなかでも最も基本的な検査で、臨床検査のバイタルサインといっても過言ではない。それを見逃すと重大事につながるということも少なくない.本稿では,「見逃してはいけない血算」のポイントとして,①貧血,②赤血球増加症,③血小板減少症,④白血球増加症についてまとめ.具体例を読み解きながら,「血算の診かたのコツ」を述べる。 講演の詳細

2) 頭痛大学―頭痛の総括的理解―

温知会間中病院院長 間中信也
第30回日本臨床内科医学会
日本臨床内科医会会誌第31巻第4号2016平成28年12月

慢性頭痛はきわめて普遍的な症状であり,世界の統計によると約50%の人がなんらかの頭痛を有している。頭痛は一次性頭痛(頭痛もちの頭痛,慢性頭痛)と二次性頭痛(原因疾患に起因する頭痛)に大別され、一次性頭痛は片頭痛(8%),緊張型頭痛(22%),群発頭痛(0.1%)が三大頭痛である.一次性頭痛のなかでも片頭痛は生活支障度が高く,日本で840 万の人が悩んでいるが、頭痛は約8 割が誤診されているといわれ,その認知度はまだまだ低い。 本稿では、外来で頭痛新患を診る場合の,頭痛のABCDE診断について述べる。 講演の詳細

3)3秒で心電図を読む

公益財団法人心臓血管研究所所長 山下武志
第30回日本臨床内科医学会
日本臨床内科医会会誌第32巻第1号2017平成29年6月

心電図,これは日常診療では避けては通れない,かつとても簡単な生理検査で、先生方が学生時代から慣れ親しんでいる古い検査法である。にもかかわらず,苦手意識が邪魔をしてしまう先生方が多い。実際,新しい検査法,特に心臓超音波検査,心臓CT検査や心臓MRI検査のほうが使いやすい。それでも,心電図は心臓病をスクリーニングするには,胸部X線検査と並んで最も簡便であり,ゲートキーパーとしての役割をもち,特にプライマリーケアでこそ必要なものである。本稿では,このような心電図を学問としてではなく,ゲートキーパー的ツールとしてうまく利用するこつを述べる。 講演の詳細

4)知っているようで知らない便秘とオシリの話
―教科書にも書いてない肛門科医が診ている便秘―

大阪肛門科診療所副院長 佐々木みのり
第31回日本臨床内科医学会
日本臨床内科医会会誌第32巻第5号2018(平成30)年3月

便秘とは便を秘めること。RomeⅣや学会の診断基準など便秘の定義はさまざまで,その診断・治療も多岐にわたるが,われわれ,肛門科医が診ている便秘とは「便を秘めること」。だから毎日排便があっても出口付近に便が残っていれば便秘と診断してい。実際に痔や肛門のトラブルで筆者の外来を訪れる患者の9割が実に毎日排便がある人で,本人に便秘の意識はゼロである。どこに便を秘めているかで便秘を分類し治療を組み立てると臨床的に非常にシンプルである。便が停滞しているのは「おなか(大腸)」なのか?それとも出口の「オシリ(直腸・肛門)」なのか?それによって治療が全く異なったものになる。

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5)デジタル時代の胸部X線写真の診かた
―画像処理と視線の動きで隠れた領域の肺癌を見逃さない!―

独立行政法人国立病院機構大阪医療センター先進医療部長,医療技術部長,放射線診断科科長
栗山啓子
第31回日本臨床内科医学会
日本臨床内科医会会誌第33 巻第2号2018(平成30)年9月

胸部X 線写真はレントゲン博士によるX 線の発見以来,胸部画像診断の基本となっている。苦手意識が強いのは,検査値のように異常値として表示されないため,病変を発見することが難しいからで、病変を疑いさえすれば,確認のためにCT 検査で存在診断と質的診断が可能となる。.問題は被曝量で,CT(5〜30 mSv程)はX線写真(0.06 mSv)の約100倍被曝する。年齢,性別を問わず循環器と呼吸器疾患のスクリーニングには胸部X線を撮影し,効率よく読影することが重要である。

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6)肺がんを見落とさないための胸部単純X線写真
(胸部写真)の読影

神奈川県立がんセンター呼吸器内科部長 山田耕三
第32回日本臨床内科医学会
日本臨床内科医会会誌第33巻第4号2018(平成30)年12月

胸部単純X線写真(以下胸部写真と略す)の読影を始めたばかりのときには,指導医の指摘した陰影をどうしても指摘できないことや,自ら胸部異常陰影を指摘して,その後CT 撮影を行っても胸部写真の指摘領域に異常を認めないこともあり,胸部写真の読影は難しいという実感は多くの医師が思っていることと言える。これは,胸郭という骨格領域が多く,また縦隔という特殊な領域をもっている解剖的な問題点が言われている。また脊椎近傍,縦隔近傍,横隔膜近傍など解剖的にも盲点が多いことも読影を難しくしているといえる。CT が普及した現在でも,胸部写真を撮影する目的は,①肺野〜縦隔の異常の検出と,②その局在診断ということになる。また,胸部写真は骨から軟部陰影,上腹部を含め胸郭全体を観察できるので,体の上半身全体のスクリーニングや通常の胸部検診としての簡易な経過観察に適している。日常診療においては臨床的にも情報量が多い検査であり,肺がんなどの肺の悪性病変だけでなく,気道および肺内の炎症病変や胸膜の病変,心臓の異常を発見する契機になる。胸部写真の読影はすべての診療科で必要なスキルであり,本稿では肺がんを見落とさないための基本的な胸部写真の読影について述べる。 講演の詳細

7)神経所見の診かた

横浜市立大学名誉教授 長谷川修
第32回日本臨床内科医学会
日本臨床内科医会会誌第33巻第5号2019(平成31)年3月

神経所見も総合診療と同じで,病歴で絞り込まないと,次に何をするかが決まらない。「こうかもしれない」と想起したときの確認手段について解説する。見たままを言葉で表現する練習をすること。必ずしも立派な医学用語は必要ない。神経診察法といっても,一般身体所見と同じで、何を知りたいかによって工夫する。たとえば,Carnett 徴候という腹痛が腹壁由来なのか,腹腔内由来なのかを知る診察法がある。これと同様に,例えば手先の細かい運動ができないのは,高次機能,錐体路,錐体外路,小脳,末梢神経,筋のどれが原因かを鑑別するわけである。 講演の詳細