一般社団法人 日本臨床内科医会 会長 菅原正弘
日本臨床内科医会は、2000-2001年のインフルエンザシーズンから全国各地の会員が参加するインフルエンザ研究班を組織し、オンライン集計を活用した多施設共同研究を継続してきました。その成果は、多数の英文論文にまとめられ、また2006年からはインフルエンザ診療マニュアルとしても毎年公表されています。途中、抗インフルエンザ薬耐性ウイルスA(H1N1)の性状を明らかにするなど、基礎と臨床のデータをリンクさせる数少ない臨床研究として国内外で注目されてきました。
ところが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的なパンデミックとなり、世界でインフルエンザの流行は影を潜めてしまいました。日本でも2020-2021年シーズン以降は、インフルエンザの流行がほぼみられない状況が続きました。その原因として、 COVID-19の感染予防策として多くの人々がマスク装着や手指衛生を心掛けたため、あるいはウイルス干渉によりインフルエンザ感染が抑制された、など様々な仮説があるものの、その詳細はまだ明らかではありません。ところが2022年の5月には、南半球のオーストラリアで2019年並みの流行がみられました。今後、日本でもインフルエンザが流行する可能性は十分あるでしょう。2シーズンもインフルエンザの流行がなかったため、インフルエンザに対する免疫が低下していて、例年より大きな流行になるのではないかとの懸念もありました。これからも、流行するウイルスに応じて、最新の情報をもとに的確な診断と合併症も含めた正確な治療が求められます。当会は、今シーズンもインフルエンザ流行の再来を想定し、この臨床研究を継続します。
この度、インフルエンザ/COVID-19診療マニュアル2024-2025年シーズン版(第19/2版)として二本立てのマニュアルにリニューアル発刊の運びとなりました。これまでのインフルエンザ研究成果に加え、COVID-19に関する最新情報、特に変異ウイルス株やワクチンについて詳細がまとめられています。このマニュアル作成にご尽力くださった先生方のご努力に感謝申し上げます。このインフルエンザ/COVID-19診療マニュアルを日常診療で活躍されている先生方の感染症診療に役立てていただけることを切に願っています。最後に、COVID-19との戦いはまだまだ続くことが想定される中、引き続きインフルエンザ研究のために貴重な臨床データの入力や臨床検体の収集に多くの会員の先生方にご協力をお願い申し上げます。また、すべての先生方と従業員の皆様のご健勝を心より願っております。
ご希望の方には、一冊¥800(消費税・送料別)で頒布しておりますので、ご連絡ください。