日臨内インフルエンザ研究に参加された先生を中心にお集まりいただき、第13回インフルエンザ夏季セミナーを平成26年7月19日(土)リーガロイヤルホテル東京にて開催しました。このセミナーでは、毎回前年の日臨内インフルエンザ研究の新しい成果が発表されるとともに、特別講演としてインフルエンザに関連する分野で最先端の研究をされている先生にご講演いただいています。以下に各講演の主旨を記載いたします。
(日臨内インフルエンザ研究特任理事 岩城紀男)
インフルエンザの診断における迅速診断キットの有用性とHI抗体価の検討
久留米臨床薬理クリニック(福岡) 池松秀之
2014-15年流行期にウイルスが分離された症例数は389例で、患者年齢は1歳から88歳、型・亜型の内訳は、H3N2が369例、Bが20例、H1N1pdm09は0例であった。
迅速診断キット陽性と判定された症例での陽性試験予測率はA型で90.9 %、B型とで91.3 %であり、迅速診断キットの有用性は今シーズンも高いと考えられた。2014-15年流行期はH3N2でキットは陽性と判定されたがウイルスが分離されなかった例が例年と比較して多くMDCK細胞ではウイルスが分離されない症例が多かったと推定された。
ワクチン接種前のHI抗体価40倍以上の割合は、H1N1pdm09 53.0%、H3N2 89.4%、B 68.8%と高く、接種後のHI抗体価40倍以上の割合も高かった。H3N2感染者の急性期のHI抗体価は60%で40倍以上であり、流行したウイルスの抗原性がワクチン株と異なっていた可能性が示唆された。
インフルエンザの流行状況とワクチン、抗インフルエンザ薬の有効性
日本臨床内科医会インフルエンザ研究班班長 河合直樹
2014-15年シーズンの流行はPCR等の結果、A香港型(H3N2)が約95%、B型は5%程度で、H1N1型は全くみられなかった。流行の開始とピークは例年より約2週間早かった。A香港型の年齢層は10代(27%)と60歳以上(19%)が比較的多く、B型は約7割が20歳以上であった。
ワクチンに関して、インフルエンザ発生率は10歳代では非接種群の29.6%に比し、接種群では10.3%と有意に低く(p<0.001)、有効性が確認された。抗インフルエンザ薬は例年より各薬剤ともA型では解熱時間が短い傾向にあり(25.8~28.7時間)、ウイルス残存率も低い傾向にあった。B型は例年同様、A型よりも解熱時間が長かった(37.5~46.5時間)。
インフルエンザ症状で受診しキット陰性の40数%でmultiplexの遺伝子検出システムで何らかの呼吸器ウイルスが検出された。65歳以上の肺炎球菌ワクチン接種率は前シーズンの19.9%から28.2%に大幅に向上し、公費負担導入効果が考えられた。
結語:2014-2015年シーズンはほぼA香港型一色の流行でワクチンや抗イ薬の有効性も確認された。